『ファークライ5』~カルトの作り方~

2017年11月16日| ファークライ5| UBISOFTJAPAN

By Mikel Reperaz (Ubiblog編集者)

『ファークライ5』では、住人たちを「救済する」べく活動するエデンズ・ゲートのカルトメンバーたちによってホープカウンティが支配されています。有無をも言わせないやり方は卑劣で、彼らの信条は到底賛同できるものではありません。しかし、彼らは空想上のグループというわけではありません。並外れたキャラクター、一見徳があるような教義やオリジナルの賛美歌にいたるまで、現実にいてもおかしくないような組織に仕立て上げました。カルトがどのように動き、なぜ彼らが危険なのか真相に迫るため、「Cult Education Institute」のリック・アラン・ロス(以下リック)に話を聞きました。

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リック:

「カルト集団というのは、規制されていない成長産業のようなものです。アメリカでは、こういったグループは法律で守られています。さらに彼らは免税資格を有し、一般的な企業や団体には認められていない様々な待遇を受けています。彼らは常に成長しており、大学のキャンパスで勧誘活動を行ったりと、活動形態はさまざまです。。こういったグループがいつも信仰深いとは限りません。政治的な活動をしている場合もあります。エクササイズ、ヨガ、ダンスや格闘技の団体であったり、セミナーを開いている場合もあります。彼らがターゲットにするのは人生に幸せを感じられていない人々です。」

 

『ファークライ5』の開発当初、クリエイティブ・ディレクターのダン・ヘイ(以下ダン)はカルト教団にある一定のイメージを持っていました。「変なローブを身にまとい、ヤギが歩き回る中変な呪文を唱えている人がいるのではないか?」

 

しかし現実の彼らはビジネスに近かったのです。カルト信者にはそれぞれ、グループのヒエラルキーの中で与えられた仕事があります。こういった組織の中ではカリスマ的なリーダーが頂点に立っていることが多いのですが、組織の日常面(カルトメンバーの食事や生活について)の面倒は別の人々が見ている場合が多いのです。

 

ダン:

「なぜ私たちはマフィアやギャングについてのドラマを見るのでしょうか?私はこれから先も一生ギャングの一員になることはないでしょう。でも、見ている間は彼らの生活を体験できます。今まで聞いたことの無いような言葉で話し、見たことの無いようなことをする彼らを取り巻く環境や独自の言葉、そして彼らの生活を垣間見ることが出来るのです。そういった番組で見ることのできる彼らの生活はとても現実的に感じられます。私たちはカルトにおいても同じことをしたかったのです。」

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その結果、「ファーザー」ことジョセフ・シード率いるエデンズ・ゲートが作り上げられました。ジョセフは地殻変動を起こす炎がすぐそこまで迫っており、自分は現代のノアとなり、世界の崩壊から人々を救う使命を背負っていると信じています。彼の計画は、町の人々の意思とは関係なく、皆を地下に誘導し安全を確保することでした。それを実現するため、彼はまず最初に家族を入信させました。そして彼の家族もまた、この組織を現実に作り上げるためなら人々の犠牲を厭わないのです。

 

ダン:

「ほとんどの人が、自分がカルトにだまされることなんて絶対にない、と信じていると思います。なので、私たちも「これなら自分の身に起きてもおかしくはない」と思えるようなシチュエーションを作るしかない、と思いました。私たちには素晴らしいライター、素晴らしいチームがいます。そんな中、俳優のグレッグ・ブリックに出会いました。彼が私たちに送ってきたオーディションの資料を見たとき、一目で私はこう思いました―彼の率いるカルトなら、入信してしまうだろう―と。」

 

「そして彼のゲームでの演技を見て、さらに私はその気持ちは確信を得ました。きっと私は入信するだけではなく、彼の指示に従うでしょう。例えそれが良い行いではなかったとしても。」

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何がカルトのリーダーを危険な存在にするのかというと、彼らは「信者を崖っぷちに追い込む」ことが出来るからです。破滅的なカルトというのは自らの信者を隔離し、日々の生活を外の情報から完全に切り離した空間に閉じ込めてしまいます。そしてこういった人々、特に精神的な疾患や妄想に苦しんでいる人々は、リーダーに現実の「答え」を求めています。

 

リック:

「リーダーが、この世の終焉が来ていると言えば、終わりが来るのです。私はそのようにして起きたカルト教団の悲劇をいくつも見てきました。カルト教団のリーダーが「私の終わりがやってきた。だから一緒に行くのだ。私の言うとおりに考えなさい。私の言うことこそが真実だ」と。そうしてグループは完全に道を踏み外し、取り返しのつかないところまで行ってしまうのです。」

 

※本記事はUbiblogの英文記事を元に作成しています