味わえるのは、
観光と戦争
MEETS VARIOUS ARTISTS vol.6佐久間宣行・TVプロデューサー
SAKUMA
NOBUYUKI
Movie
オープンワールドゲームのストーリーの面白さと、
自由度の高さ、その両方がちょうどいい具合
オープンワールドゲームの
ストーリーの面白さと
自由度の高さ、
その両方がちょうどいい具合
-『ファークライ』シリーズはご存じでしたか?
ラジオ(『佐久間宣行のオールナイトニッポン
0(ZERO)』)のスタッフのひとりが、『ファークラ
イ』シリーズが
大好きでほとんどプレイしているんで
すよ。そんな彼に「絶対にやったほうがいい」ってオ
ススメされて、『フ
ァークライ5』を遊んでみたら、
めちゃくちゃ面白くて。『5』は、カルト教団をモ
チーフにした世界観と、そ
の教団の司祭である悪役の
ジョセフ・シードが本当に憎たらしくて良かったで
す。
このジョセフ、信者からは”ファーザー(教父)”と呼ば
れていて、ファーザー直属の使者3人も含めて「こい
つら
絶対に倒したい!」と思わせる設定が秀逸なんで
すよね。「俺がここで活躍しないと、この世界がダメ
になる」
というような、主人公感がすごく味わえるん
ですよ。
まさに、オープンワールドゲームのストーリーの面白
さと自由度の高さ、その両方がちょうどいい具合だ
なと思
って、とても夢中になりました。
-ちなみに今作『ファークライ6』のダウンロード
コンテンツでは、過去作の悪役たちになってプレイ
すること
ができます。
『5』の”ファーザー”になれる、ということですか?
『5』はエンディングまでプレイしましたが、「ファ
ーザ
ーには償いをさせたい」という気持ちがすごく
あるんですよね。アイツ全然反省しませんし(笑)。
ですから、もし自分がファーザーになって遊べるの
なら、”いい人間であろうとする自分”と、”ファーザ
ーにな
ったのならもっとヒドいことをしたいという
自分”で、脳内がせめぎ合うと思います。
-最新作の『ファークライ6』を遊んでみた印象
は?
ファーストインプレッションは、「これ、めちゃくち
ゃ面白い」に尽きます!
南米のキューバをモチーフにした世界観が新鮮で、南
国特有のあたたかい気候が感じられる自然豊かなシー
ンが
魅力的でしたね。かつ、独裁者(大統領)に対して
小人数のゲリラたちが立ち向かっていく、というス
トーリーは
本当にワクワクする設定だなと思って。
その大統領の息子が、父親の言動に疑問を抱いてい
て……しかも弱冠13歳という設定ですから、まだ中
学生で
すよ。そんな彼を、反政府ゲリラの主人公たち
が助けるのかどうか? という部分も含めて気になりま
すよね。
なおゲームの序盤、ゲリラ軍は主人公のダニー・ロハ
ス含めて、4~5人しかいないんですよ。それで、何
十万
人もいる政府軍と戦っていくんですよね? そ
の差を、どうひっくり返していくのかも楽しみです。
たとえば、映画でいえば『レオン』みたいな流れに
なるのかな? とか、また『ランボー』みたいな展
開になっ
ていくのかな? など、いろいろ想像してし
まいます。
それと、本作の舞台となっている(架空の)島国”ヤー
ラ”の海がとにかく美しくて、開放感もあって……キ
ューバ
旅行といいますか、観光地に行っている感じ
がちょっとだけ味わえましたね。
本当に、今回は時間の関係で、ゲーム序盤しかプレイ
できなかったのが悔やまれます。
-本作に登場するキャラクターの印象は?
大統領のアントン・カスティロが出てきた瞬間に、
つい「あっ!」と声を上げちゃったんですけど、
「この人が
敵キャラクターだと最悪だな」っていう
俳優さんが演じているんですよ。
じつは、アントン・カスティロ役のジャンカルロ・エ
スポジートさんって、海外ドラマ『ブレイキング・バ
ッ
ド』のグスタボ・”ガス”・フリング役も演じている
んですけど、このガスがドラマ史上最高レベルの悪
役とも言
われている「本当に怖っ!」というキャラ
クターなんです。そのガスを演じている俳優さんが、
本作の大統
領……しかも悪役と知って、一気に自分
のなかの主人公感が高まったと言いますか。
しかも、ちょっと彷彿とさせるんですよ、ジャンカル
ロさんが演じてきたガスを。そんなキャラクターを
宿敵に
して遊べるんだ、という部分が個人的にはと
ても楽しかったです。
とはいえ、大統領のアントンはクレイジーな人間で
はなく、きちんと理想があり、それを追及するため
には人を
人とも思わない、という独裁国家の君主で
すから、これは相当厄介ですよ。もしかしたら、「最
強の敵かもしれ
ないな」と思いますね。
プレイヤーの行動次第でドラマを体験することができる
プレイヤーの行動次第でドラマを体験することができる
-佐久間さんがゲームに求めていることと
は?
ストーリーと、非日常感ですね。映画や小
説なども好きなんですけど、ゲームの場合
はインタラク
ティブ性が高いぶん、自分が
主人公に没入しやすいんですよね。
自分が入り込みたい世界観・ストーリー
か、という判断で、遊ぶゲームを決めるこ
とも多いです。
-映画や演劇、小説などと異なるゲームな
らではの魅力とはどのような部分だと思い
ますか?
たとえば、単純にストーリーだけを楽しみ
たい、というときは映画やドラマを見ます
し、また誰か
の創作物を味わいたい、とい
うときは、演劇や小説などまた違うメディ
アで楽しむんですけど……
とくにゲームの
場合は、”自分の感情を高ぶらせたい”とき
や、”自分で達成感を味わいたい”ときに遊
びます。
『ファークライ』シリーズに代表されるオ
ープンワールドゲームはとくにそうだと思
うのですが、
軸となるストーリーはありつ
つも、プレイヤーの行動次第でさまざまな
ドラマを体験することがで
きるのが、魅力
のひとつだと思いますね。
-昨今のゲーム制作の流れとして、実在の
俳優・役者が、3DCGになって出演するこ
とも多くなっ
てきていますが、どのように
感じていますか?
その俳優さんが持っている記名性といいま
すか、「あの俳優さんがこの役柄をやるん
だ」という面
白みと迫力を借りてこられる
ので、ストーリーにもすごく厚みが出ます
よね。しかも、自分がその
スター俳優と
(ゲーム内で)一緒に芝居をできるんです
よ。その感じを味わえるのは、面白いじゃ
ない
ですか。僕が『ブレイキング・バッ
ド』のガスに立ち向かうことはできません
が、『ファークライ
6』のゲーム内なら
ば、ガス役を演じたハリウッド俳優のジャ
ンカルロさんと共演しつつ、立ち向
かうこ
ともできます。
映画やドラマだと、見ることしかできませ
んが、ゲームは”体験”することができま
す。映画やドラマ
の感情移入とは度合いが
異なるんですよね。これは良い悪いではな
くて”違い”だと思います。
-これまで数々のテレビ番組を手掛けてき
た佐久間さんから見て、ゲームの表現・演
出・手法にお
いて、魅力的だと感じる部分
はどのような部分ですか?
とくにゲームは自分で体験していくからこ
そ、映画やドラマなどと違って「やりすぎ
だよ!」とい
った過度な演出がプラスに働
くことが多いんですよね。
たとえば、いきなり爆破に巻き込まれた
り、仲間がすぐに倒されてしまったりな
ど……映画やドラ
マだったら、そんな演出
ばかりがてんこ盛りだと荒唐無稽でトゥー
マッチですよね。
しかしゲームだと、それが違和感なく乗り
こなせてしまう。しかも、プレイヤーとし
て、もっとも
っとって欲しがってしまう部
分もありますよね。
僕は、そんな大胆なストーリー展開をゲー
ムを楽しむうえでとても大事にしていま
す。
-本作では、ダックスフントやクロコダイルなどの動
物”相棒(アミーゴ)”とペアを組んで戦うことができま
す。佐
久間さんはどのアミーゴといっしょに行動した
いですか?
ダックスフントがクロコダイルよりも役立つと思えな
いけど、大丈夫なのかな(笑)。動物としては犬が好き
です
けど、やっぱりクロコダイルの”グアポ”かな。
けっこうゲーム序盤でアミーゴになってくれますし
ね。
-佐久間さんが仕事および人生で戦ううえでの”相棒
(アミーゴ)”とは?
人生で戦ううえのでの相棒は、ずばり”家族”ですね。
我が家は、妻も娘もエンターテインメントが大好き
なんで
す。僕の作品については、あまり感想や意見な
どは言わないのですが、世のなかの面白いエンタメ
をたくさん教
えてくれます。
娘からは、いま10代で流行っているアニメやゲーム
などを教えてもらえますし、それを自分の番組のアイ
デア
などにも取り込んでいます。ティーンの娘がいて
よかったな、と思うことが日々よくあるんですよね。
また妻は、韓国のカルチャーが好きなので、僕自身
もK-POPや韓国ドラマ、韓国映画に詳し
くなりました。
そういう意味では、家族にはいつも、自分の仕事に
すごく役に立つ武器を貰っている感じがしています。
-『ファークライ6』では、「何もない状況(ゼ
ロ)から必要なものを自らの手で作り上げる」、”リ
ゾルバー
(哲学)”という考え方がゲームシステムに取り
入れられています。佐久間さんは、テレビプロデュー
サー・演出家
としてものを作り出すときに、どのよう
な思考で生み出しているのでしょうか?
ものを生み出す最初のきっかけは、”社会や世のなか
に対して、自分だけしか持っていない感情”を探すこ
とが多
いです。たとえば”違和感”など。
「みんなはめちゃくちゃ盛り上がってるけど、自分
はそんなに面白いと思わないな」ということを憶えて
おい
て、あとでじっくりその理由を考えてみるんで
す。それがヒントとなって、番組の企画に繋がったり
もします。
なお『ファークライ6』の”リゾルバー”のようなクリ
エイティブ&カスタマイズ要素は大好きで、小・中学
生の
ときはプロ野球のシミュレーションゲームで、
延々とオリジナル選手を作ってました。
そういう意味では、ユニークな武器やビークルが作れ
て改造もできる”リゾルバー”にはワクワクします。
-本作は、独裁者とゲリラの戦いが物
語の軸となっていますが、もしも、こ
の世界観を活かし
て番組を作るとした
ら、どのような企画を考えますか?
これ、お笑い界に例えたら面白い企画
になるんじゃないかな?
若手芸人が何人かで集まって、お笑い
の”独裁者”……というとちょっと語弊
があるので
(笑)、”実力者”に立ち向か
う、という設定で、たとえば大喜利で
対決するとか、いろいろ考え
られそう
です(笑)。
-『ファークライ6』のどのような部
分をプレイヤーに楽しんでもらい
たいですか?
『5』もそうでしたけど、『ファーク
ライ6』は、さまざまな楽しみ方のレ
イヤーがあると思
うんです。遊びの幅
がとにかく広い。
もし僕のラジオ番組のファンにオスス
メするとするならば、「『ブレイキン
グ・バッド』のア
イツが悪役で、自分
が主人公になって立ち向かえるよ。し
かも、政府軍にケンカを売る絶望的
な
戦いだよ、こんな面白いことある?」
っていうのを伝えたいです(笑)。
-最後に、本作にキャッチコピーをつ
けるなら?
「観光と戦争」。
僕が味わうんだったらそのふたつだ
なと思いましたね!
本文・編集:ローリング内沢/村田征二朗 写真:中⻄祐介
さまざまな楽しみ方のレイヤーがあると思う
遊びの幅がとにかく広い
さまざまな楽しみ方のレイヤーがあると思う
遊びの幅がとにかく広い