十字軍遠征の主目的は「イスラム教からの聖地奪還」であったが、実際にはさまざまな思惑がからんでいた。国王や諸侯にとっては領土拡大の好機となり、教皇は教義が対立する東方教会(東ローマ帝国の国教)を取り込もうとしていた。また、商人たちは東方への販路拡大をもくろんでいたのだ。
第4次十字軍の頃から主目的よりも思惑が優先されるようになり、しだいに十字軍の存在意義は薄れていった。そして十字軍の遠征は数度の失敗を経たのち、1291年に大シリアにおける唯一の拠点、エルサレム王国の滅亡をもって終結する。ちなみに、十字軍時代は日本の平安時代後半から鎌倉時代前半にあたり、源頼朝が鎌倉幕府を開いたのが1192年頃。主人公アルタイルはその約1年前に活躍した人物ということになる。