18世紀後半~産業革命に至るまでの社会や経済の変化に伴い、イギリス市民は3つの階級に分かれていた。支配者層(王室・貴族・ジェントリ)で構成される上流階級、ブルジョワジー(産業資本家や銀行家など)で構成される中流階級、プロレタリア(賃金労働者)で構成される労働者階級である。
19世紀後半、製造の中心であった都市には、職を求めて地方から多くの人が流入していた。だが、急激な人口の増加にインフラの整備や住居の建設が追いつかず、さまざまな問題が生まれ、労働者たちは劣悪な環境で生活することとなった。労働条件も悪質であり、1日14時間以上の労働や子供の雇用、低賃金が当たり前になっていた。
熟練の労働者でも年収が80~100ポンド、それ以外の労働者は収入が50ポンドにも満たず、ほとんどの労働者はまともに食事をとることも、日用品をそろえることもできなかったのだ。
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多くの労働者は、不衛生なスラム街に住むことを余儀なくされていた。スラム街に暮らす労働者たちは、狭い部屋を複数の人間で借りて、すし詰めの状態で寝たり、ひどい匂いのする水を飲み水としていたのである。伝染病が流行したときなど、薬を買うことも医者に行くこともできないため、多くの労働者が死んでいった。当時の労働者たちは、そのような劣悪な環境でしか生活できないほど追い詰められていたのである。
多くの名作を世に送り出した、当時のイギリスを代表する作家チャールズ・ディケンズは、少年時代に靴工場で労働した経験から、労働階級の暮らしを舞台にした作品をいくつも執筆している。また、作品を通してヴィクトリア朝の社会批判を行うなど、労働階級の味方でもあった。
産業革命以降、労働者たちは資本家たちから一方的に搾取されていた。この状況を打開し労働条件を改善するため、労働者たちは労働組合を組織し資本家や政府と闘い始めたのである。
1799年、生産の機械化により仕事を失っていた労働者たちは、機械を壊し仕事を取り戻そうとラダイト運動を起こした。この運動は政府によって厳しく弾圧されたが、労働者たちの連帯感は高まり、各地で団結し始めた。1824年に団結禁止法の撤廃に成功し、労働者たちは合法的に労働組合を結成するようになる。
政府からの規制や弾圧を受けながらも、労働条件の改善を求める動きは広がっていった。1864年、マルクスやエンゲルスらが中心となって結成した、世界初の国際的な労働者の組織「第1インターナショナル」や、1868年に労働組合会議が組織されるなど巨大な労働者団体が結成され、労働運動は活性化していくこととなる。